◆“引導”を渡した三越出身会長
そうした中で大西氏は、社内に多くの“敵”を作りすぎたという見方もある。
「2008年の経営統合は、業績不振に陥っていた三越を伊勢丹が助ける事実上の“救済合併”と見られていた。統合以降に閉鎖された店舗は旧三越が大半で、昨夏に解消されるまでは旧伊勢丹出身者のほうが給与が高いという賃金格差も残っていた。旧三越の社員には鬱憤が溜まっていたといわれています」(前出・関氏)
そんな状況の中で大西氏に強烈な逆風となったのがインバウンド(訪日外国人)による“爆買い”の失速だった。百貨店事業が92%と高い三越伊勢丹の売り上げは急減し、昨年10月に2017年3月期の純利益見通しを大幅下方修正(2%減→51%減)した頃から、「社内の“大西降ろし”ムードが急加速した」(経済誌記者)という。
最終的に大西氏に“引導”を渡したとされる石塚会長が旧三越出身(合併時の三越社長)だったのも因縁というべきか。
ユニクロなどの量販店の攻勢や消費者の節約志向など、百貨店を取り巻く状況は厳しく、体制を刷新しても業績回復の見通しは立たず、気まぐれなインバウンドに依存する状況は変わりそうにない。前出・内田氏はこう語る。
「大西さんの辞任は、百貨店ビジネスの“最後のひと花”が散ったという意味になるかもしれない」
※週刊ポスト2017年3月24・31日号