これもまた、出産の神秘、について考えさせられる事件といえるだろうか。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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なんとも奇妙でお騒がせな事件である。
杭州市のある自動車工場に、生まれたばかりの赤ん坊が血だらけで放置されているのを出勤してきた従業員が発見した。朝、8時20分ごろで、辺り一面は血が広がっていたという。従業員は、ピクリとも動かない赤ん坊がすでに死んでいると思った。というのも赤ちゃんはこの時期の冷たいタイルの上に置かれていたからだ。しかし、間もなく赤ちゃんが小さく動くのを集まった従業員たちが確認。大慌てで救急車を呼び、警察にも連絡を入れたことで事件となったという。
これは3月12日に『銭江晩報』が伝えたもので、記事のタイトルは、〈杭州の一人の女 自動車修理工場に入り込み、2分間で赤ちゃんを出産 手でへその緒を切って立ち去る〉であった。
若い女性の出産を巡る「とんでもニュース」は中国では少なくない。それでもこのニュースにはメディアも激しく反応し大きな話題となった。
赤ちゃんを置き去りにされた自動車修理工場では、すぐにも防犯カメラがチェックされ、そこに二十歳前後の女性が写っていることを確認した。ただ、驚いたのはその手際の良さで、出産して立ち去るまでわずか2分程度の時間しか要していなかったというのだ。
この女性はいったいどこに消えたのか?
地元の夕刊紙『銭江晩報』の記者が追いかけたところ、女性は、実は逃げたのではないことが判明したという。
記事によれば、女性は工場の前を通りかかったときに突然産気づき、そのまま慌てて工場内に入ってしまい出産。ただ、その後は何をしてよいのかわからず、とにかく家に戻って助けを求めたというのだ。結局、父親を連れて現場に戻ったところ、すでに工場は人だかりができて大騒ぎになっていたので警察に出頭したというのだ。
まあ、悪気はなかったということなのだろうが、冷たい床に置きっぱなしにされた赤ちゃんは、体温が30度前後まで落ちていたというから、やはりとんでもない事件といわざるを得ないだろう。