少子化や遠距離、はたまた日々の忙しさで、先祖代々の墓を引き継いでいけない人が増え、無縁化した数多の墓が社会問題になっている。改葬先として近年、急速に数を増やし、大きな注目を集める「室内墓」とはどんなものなのだろう。ノンフィクションライターの井上理津子氏がその実態をレポートする。井上氏が訪れたのは、「高級感あふれる室内墓所」「新宿南口徒歩3分」などのキャッチフレーズで知られる新宿瑠璃光院白蓮華堂だ。
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実を言うと、室内墓は、歴史的な雰囲気も緑の景色もなく「花と線香を持って」という従来のイメージから遠いお墓参りは味気ないのではないかと懸念していたのだが、見学するうちに「便利優先もアリだな」と思えてくる。ここではお墓掃除が不要なぶん、めいっぱい精神的なお墓参りができそうだ、と。
値段は、7寸の骨壷が2つ入る大きさの厨子を用いる、家族用のお墓が180万円(東側参拝所利用=すでに完売)と200万円(西側参拝所利用)。厨子の大きさが約半分の個人用(承継者がいない人用)のお墓が1人用100万円、2人用120万円。
外墓の東日本平均価格203万2900円(株式会社鎌倉新書、2015年『墓所・墓石消費者全国実態調査』)だから、家族用はほぼ同額(個人用は約半額)。瑠璃光院の自動搬送式は、墓石もスペースも他の人と共用なのに…と思った。
しかし、ここでは希望すれば浄土真宗の法名(戒名)が無償授与されるし、改葬の場合は諸手続きの代行もしてくれるという。さらに、年間管理費が途絶えると、系列の霊園、京都天が瀬メモリアル公園(京都府宇治市)に遺骨が運ばれる。同院の業務統括推進本部部長の木下尚子さんは「最後は、満天の星の下、土の中にお眠りいただけます」と言う(後日、そこへも行ったが、丘陵地に芝生が敷き詰められた、広々とした霊園だった)。
つまり、ビフォーとアフターのサービスも付いている。総合的に考えると、意外とお得感があるぞ、と頭を振った。
そんなふうに、費用対効果について頭を巡らせていた時、木下さんが「特別個室もご案内しましょう」と、一般参拝スペースの奥に連れて行ってくれた。