「スマホばっかりやっていて、勉強しないからだろう」と思うかもしれないが、そうではない。この調査を行った『やってはいけない脳の習慣』の共著者で東北大学加齢医学研究所助教の横田晋務さんはこう説明する。
「例えば算数・数学の1日の勉強時間が2時間以上で、スマホ使用が4時間以上の生徒の正答率が55%なのに対し、勉強時間が30分未満でスマホをまったく使用しない生徒の正答率は60%。家庭で平日に1日2時間以上も勉強している子が、スマホを4時間以上使用した場合、ほとんど勉強していない子より成績が悪かったのです」
長時間勉強しているのに学力が上がらないのはかなりショッキングな話だ。いったいなぜこんなことが起きるのか。
「まだ仮説の段階ですが、脳科学の知見から考えられるのは“前頭葉の活動低下”です。例えば、ゲームをしている時は、物事を考えたり、自分の行動をコントロールするうえで重要な働きをする脳の前頭前野という部分への血流量が下がり、働きが低下します。
そのためゲームをした後の30分から1時間ほどは前頭前野が充分に働かず、本を読んでも理解力が低下してしまうというデータも報告されています。スマホを長時間使用すると、それと同じ脳の状態になってしまうため、学習の効果が失われるのではないかと考えられます」(横田さん)
さらに早稲田大学研究戦略センター教授の枝川義邦さんは前頭前野の仕組みについてこう説明する。
「前頭前野には何か物を考えたり、一時的に記憶をしたりする“ワーキングメモリ”という機能があります。その容量は限られていて、いわば机の上のスペースのようなもの。例えばスマホが近くにあって“いつ連絡が来るか”と絶えず気になっていると、机の上の一部をスマホのことが占領し、残った狭いスペースで記憶したり物を考えたりすることになる。
何か新しい情報が入ってきたときは、それに注意を向けると、優先的に記憶されていく一方で、注意を向けなかったものはいったん机の上にのったとしても情報自体が“なかったこと”になってしまうんです」