なにぶんお金のことです。「オレがオレが」といった腕利きならば決して納得しなかった方策でしょう。調教師の強いリーダーシップにかかっています。進上金のプールは、腕利き厩務員が若手を育てる動機づけにもなる。若手の育てた馬が勝てば、自分の懐も潤うわけです。お金のことではあるものの、そうやってチーム力が向上していきます。
チームで馬を見て作っていけば、皆が厩舎のやり方を理解して実践してくれるので、成績がガクンと落ちることはないと思います。たとえ成績が上がらないことがあっても、1人ではなく知恵を寄せ合って克服していくことができる。
チームとは不思議なもので、メンバーはリーダーに従順であればいいとは限りません。厩務員、調教助手は前進気性があったほうがいい。意見を言い過ぎる、やり過ぎるくらいのほうが能力がわかるんですね。馬と一緒で、おとなしいよりも気性が強くて引っ掛かるほうが勝つ。強い気性をリーダーがどうやってコントロールするかだけの問題です。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。
※週刊ポスト2017年4月7日号