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イタリアからのオーダーで復興させた京都のセルロイド技術

『京都セルロイド金魚シリーズ万年筆』(シガータイプ・金、1万9440円)

 かつて、『青い眼の人形』という童謡に登場し、筆箱などの材料に使われていた、セルロイド。現在はほとんど姿を消している中、『京都セルロイド金魚シリーズ万年筆』(シガータイプ・金:長さ13.3cm 最大直径1.35cm 重さ約17.4g、1万9440円)が注目を集めている。

 製造元の『トランストレード』(京都市)の広報・鈴木沙織さんは、開発のきっかけをこう振り返る。

「25年ほど前に、開発担当者が、イタリアの万年筆メーカーから、セルロイド製万年筆を日本で生産できないかと相談されたのです」

 ニトロセルロースと樟脳などから合成される、世界最初のプラスチック素材であるセルロイド。昭和初期には、世界の生産量の4割を日本が占め、戦後の1952年(昭和27年)には、セルロイドの輸出が、日本の全輸出額の5割を超え、戦後の復興期を支えていたが、その後、石油系プラスチックの台頭により衰退の一途を辿る。

「セルロイドは、時間経過で土に還る天然素材。ですが、合理化できずに廃れつつありました。そんな時、イタリアからオーダーをいただいて、改めて、加工技術を復興させたいと思い、開発に取りかかりました」(鈴木さん、以下「」内同)

 当時で80才を超えていた職人を探し出し、ノウハウを伝授してもらったが、古い加工機材などはすでに入手困難。5年の歳月をかけて、現代技術を取り入れ、セルロイド生産を確立させた。

「揮発成分がゆっくり時間をかけて抜けていくセルロイドは、生産を始めてから安定するまで約半年かかります。その間、安定後の姿を想像しながら、試行錯誤を積み重ねました」

 今では出来上がった原版をもとに、1本1本手作りで万年筆などに加工している。美しくて温かみがあり、肌なじみがやさしいと好評で、就職祝いとしても人気を得ている。

 万年筆への加工は、日本で生まれた技術「巻き加工」を採用。原版を短冊状に打ち抜いた後、湯で温めてからパイプを通して筒状にして吊るし、約2週間乾燥。これを万年筆の軸の形にしてさらに約2か月乾燥させる。

「海外製品に多い削り出し加工では、柄が美しく再現できません。巻き加工はすべて手作業で、月産50本ほど」(鈴木さん)

※女性セブン2017年4月13日号

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