ああ、しかし宝塚音楽学校に入った15才の頃、こんな日々が訪れるとは思ってもみなかった。なんたって、みなぎる若さで肌がはちきれんばかりでしたから、疲れが顔に出るってなんぞや?シワって私だけできないんじゃない?なんて本気で思い、自惚れていた若き時代。3日くらい完徹も平気でできた。今なら完徹なんて完全に棺桶行きだ。

 若き15才、ジャブジャブ顔を洗ってそのままでいる私でしたが、寮で同室になった3つ年上のかたは化粧水なるものをバシバシ肌に叩き込んでいた。その少し姉さんは言った。

「今、化粧水を惜しまず使っていると、将来の自分の肌が違うと思うよ」

 今だったら当たり前の論理とも捉えられる話だが、姉のいない私は当時はこんな話、聞いたことがなかった。

 以来、あれからウンウン十年、彼女を見習って私は化粧水だけはたっぷり使うようにしてきた。思えば、彼女からは大人の女性情報を他にもたくさんいただいたものだ。今の年齢で3才差はたいした違いはないけれど15才と18才では、まさしく大人と子供。化粧水のことに限らず、下着のことや(当時の私は、やっとスポーツブラを数枚手に入れた)、好きだった男の人のことやら(私は交換日記レベル)、そんな少し大人の女性の生活をドキドキしながら寮で垣間見ることが、何とも謎めいて憧れときめいた時間でした。

 彼女から教えてもらった保湿という発明が、今の私の肌に果たしてどれくらい影響を与えているのか。

 それは結局わからないけど、あの頃の15才の私に今の顔を見せたら一体なんて言うのだろう。そんなことをふと思いながら、今宵もパンパン明朝もパンパンと化粧水を叩き込む私なのだ。鏡よ鏡よ鏡さん…キレイにな~れ、キレイにな~れ、ホラーはヤ~よ、キレイにな~れ!

撮影/渡辺達生

※女性セブン2017年4月13日号

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