いつの時代も働く人たちの一番身近にあり、その仕事を支えてきたパートナー、それが「仕事服」である。色や形だけでなく、細部に至るまで凝らされた多くの工夫や秘密を探ってみた──。
鳶(とび)職人が「ゴト着」とも呼ぶ作業着。ダボダボに膨らんだズボンは多くの「危険回避機能」を持っていると語るのは現役鳶職人・多湖弘明氏だ。
「職人の間ではこのズボンを『七分』と呼ぶ。足元の障害物を察知するセンサーや、風でバタバタなびいて地上作業員に風の強さを知らせる風力計の役割もある。
また、高層ビルなどを建てる鉄骨鳶は、服の汚れひとつで高所でのバランス感覚が狂い命取りになる。毎日、油や鉄サビにまみれた服を洗うため『週末は嫁さんに洗濯機の排水口掃除をさせられた』とボヤく職人は多い」
ちなみに、高所で作業する鳶職人は幅太なもの、左官などの地上職は普通の太さのズボンをはくなど、仕事によってダボダボの幅が違う。「服装を見れば仕事がわかる」と、前出の多湖氏はいう。
※週刊ポスト2017年4月14日号