「木製部分は、天然漆をしのぐ高品質を誇り、日本の美の工芸品に使用されるのと同じカシュー塗りなんです。須弥壇に、すべて手彫りの薬師如来様が安置されていますでしょう?」と岩田さんが言う。
すべてに高級素材が使われ、伝統的な技巧が凝らされているのだ。ガラスの扉を開け、須弥壇と呼ぶ内部に目を凝らす。
仏壇の中に、金箔があしらわれた豪華なお社があるような造りで、その中央に小型の薬師如来が実に柔和なお顔で鎮座していらっしゃる。上部は格天井。両脇の円い柱は、白檀塗りの蒔絵仕上げだそうだ。屋根の部分には精緻な破風が設しつらえられ、仏壇というより、それぞれ“小さなお寺”といってもいいんじゃないか、と思う。
「お飾りは自由」とのことで、数人分の位牌と遺影、ウイスキーのミニチュアボトルや菓子類が置かれているところもある。そして下部は、表面を曲面に加工したというしゃれた御影石。その中に「数に制限なく、納骨していただけます」との納骨スペースが用意されていた。期間を限定せず、永代にわたって使用できるという。
「自動搬送式のお墓は、お参りに行くかたにとってはきれいな場所でいいでしょうが、中にお入りになっているご先祖の気持ちを考えると、この方式がベストだと思います。自動搬送式ではご先祖がほとんどの時間を暗い保管庫で過ごさなければならないのに対し、ここなら常に明るい場所にいられます」
岩田さんが笑顔でそう話した。反射的に「なるほど」と答えた後、骨は、お参りする人にとってメンタル面では故人そのものだという発想だと思った。わからなくはないけれど、人は気持ち的に何に向かって手を合わせるのだろうとお墓の根源的なことに思いを巡らせ、頭がこんがらがる。
「『特別壇』はすでに、全6基のうち4基が売れ、好評です。特別壇と調度が異なる『家族壇』15基は完売。その両方を4階に増設したばかりです」
特別壇と、通路を挟んだ向かい側に並んでいるのが、300万円の「家族壇」だ。背の高さは特別壇と同じだが、幅が約半分。下部の遺骨収納場所の扉に薄ピンクの蓮の花と緑の葉や茎が描かれている。300万円だって、そんじょそこらの外墓以上の価格だ。外墓に比べて安いことを理由に室内のお墓を選ぶのではない層が、しっかりいるのだと改めて認識せざるを得ない。
「仏壇型を求め、家に仏壇を置く必要がなくなったと、先祖を拝む場所を一本化したかたもいらっしゃいますよ」(岩田さん)
※女性セブン2017年5月4日号