国内

600万もする高級室内墓 選ぶ層が確実にいる

実相寺青山霊廟の「特別壇」(写真/実相寺青山霊廟提供)

 ひとくちにお墓と言っても、その内実はさまざまだ。私たちが当たり前のようにイメージしていた外墓に代わって、今、急速に増えている室内墓。その中には「動くお墓」と「動かないお墓」がある。「動くお墓」は、お参りの場で待っていると墓が移動してきて故人を偲べるもの。今回紹介するのは「動かないお墓」。ノンフィクションライターの井上理津子さんがレポートする。

 * * *
 ここ10年ほどの間に、とりわけ東京で急増した「室内」のお墓(納骨堂)の形式は、卑近な言い方をすると「動くお墓」と「動かないお墓」に二分される。前者は参拝ブースに設置した共用の墓石の中に、保管庫から骨壺が自動搬送されてくる形。後者は墓石は用いず、仏壇やロッカーなどに骨壺が保管される形だ。

 私にはお墓とはお寺の境内や霊園の地面に建つものというイメージしかなかったため、取材当初はいずれも斬新に映ったが、もう慣れてきた。

 30余年前、この仕事を始めた頃は原稿は手書きだった。それが、ワープロになり、パソコンになって、もう何年になるのか。「そんなものを使うと、思考の回路が崩れる」といわれたのは、とんと昔のことだ。

 誰もが便利さを認め、わが業界で手書き原稿がほぼ流通しなくなって久しいが、かといって日常の暮らし等のシーンでの手書きはなんら変わらない。ふとそんなことも思いながら、お墓巡りを続ける。

「動かないお墓」の2回目。今回訪ねたのは、驚くべき価格のところだ。

 ブランドショップが並び、おしゃれな人たちが行き交う東京・青山。その一角に佇む4階建ての実相寺は1634年創建の臨済宗のお寺だが、堂内「青山霊廟」に「特別壇」と称する、なんと600万円の仏壇型のお墓があった。

 東京のお墓の最高峰とされる青山霊園の価格(1.6平方メートル437万6000~4平方メートル1094万円=昨年度)と肩を並べる高額ですね…と、開口一番つい言ってしまった。

「お墓は、場所や雰囲気やサービスを考え合わせないと、高いも安いもないと思いますよ」

 青山霊廟の販売を担当するせいざん株式会社社長の岩田貴智さん(45才)に、やんわりとたしなめられ、とにもかくにもエレベーターで3階に上がり、見せてもらう。本堂が2011年に建て替えられた時に設置されたという50平方メートルほどの納骨堂は、荘厳でもあり、明るくもあった。

 代々木の寺院で、初めて「動かないお墓」が並ぶ納骨堂に入り、凜とした空気に気圧されたが、堂内全体を見守るという薬師如来が鎮座し、ここも引けをとらない。一方で明るく感じたのは、彼岸から幾日も経たないその日、供花が多かったためと、ロッカー壇の表面一面に桜やもみじの絵がカラフルに描かれていたためだろう。

 そのような中、まるで「仏壇」のように見える形のものに、ひきつけられた。それが600万円の「特別壇」だ。幅は62cm。人ひとりが立つといっぱいのサイズだが、高さは2m近くあろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン