ライフ

猫の一生には150万円必要 「迎える前に考えて」と猫シッター

家に猫を迎える前に考えるべきこととは?(写真/アフロ)

 世間は空前の猫ブーム。ところがその影に、猫との暮らしがうまくいかない人、老猫の介護に悩む人も増えているという。そこで、『猫の學校』(ポプラ社)の著者で、5万匹の猫をお世話してきたキャットシッター歴25年の「猫のプロ」、南里秀子さんにインタビュー。猫との暮らし、つき合い方、キャットフードの選び方、防災や引っ越し、病院の選び方や介護など役立つ猫知識が満載の同書から、不妊手術や介護、老猫の見送りについて聞いた。【全2回・後編】

──たとえ人間の食べ物でも、猫が「食べたい」と思う物は生きる力になると。実際、一般的に食べないと言われる物を好むこともあるそうですね。

 好物は十猫十色ですから、それぞれ違う個性をよく見て“感察”することが大切です。人間の食べ物は猫には毒とも言われますが、私は一緒に暮らす子がどんな食べ物に興味を持つのか、“感察”を楽しむようにしています。そして、「この子は焼き海苔が好きなのね」と好物を覚えておくんです。というのも、そうやって好物を探って増やしていくと、何かあったときにそれが生きる力になることを、今までにたくさん経験しているからです。病気や怪我などで弱った状態のとき、好物はそれを見るだけでむくっと起き上がる力になるんですよ。

 すごく極端な言い方をすれば、もし危険な物を食べたとしたら、その猫は野生では生き残れず自然淘汰されてしまうでしょう。ところが今は、なまじ人間側に余裕があって、医療も発達してキャットフードの栄養価も上がってきているから、本来なら野生で死んでしまうような猫もなんとか生かされてしまう、ちょっと歪んだ部分もあるんです。足の短いマンチカンなどもそうですが、人工的に変形させている弱い種を可愛いともてはやしたりするのも、歪みの1つだと思います。変形させた動物は弱いですから、医療費もかかりますし。あまり人間が自然に介入しすぎるのはいかがなものかと思っています。

◆「殺処分ゼロ」以前にやるべきことがある

──猫の一生にかかる費用を知っておくことも大事ですね。

 猫の平均寿命は15歳ですが、一生にかかる経費を計算すると、約150万円にもなります。この経費を払い続けられるかどうか、猫よりも先に寿命を迎える可能性、転職や結婚、出産、親の介護など、環境や状況が変わる時に猫との生活をどうするかということまで考えてほしいです。

 野良猫を家に入れて、お金がかかるからと不妊手術を受けさせないでいたら、あっという間に猫だらけになって家が崩壊したというニュースがありましたが、お金や不妊治療のことを正しく理解していないことが招いた悲劇です。「不妊手術は可哀想」では、結果的に全員が可哀想なことになってしまうんです。

 殺処分される6万7000匹の猫がもし人間だったらどうでしょうか? 殺処分は尻ぬぐいの部分ですから、殺処分する前にやることがあるんです。必要なのは命の教育と正しい知識。そこに気がついて社会全体で変えていかないと、殺処分はずっと続いてしまうと思います。

◆不妊手術は「可哀想」?

関連キーワード

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン