ゴロゴロ音の周波数には、骨の成長や修復、筋肉の快復や、痛みを緩和させる働きがあるんです。私たちが死に向かうときやものすごい痛みを感じたとき、脳内から恐れや痛みを緩和するホルモンが出るそうです。動物はもともとそういう力を持っているんです。その力を使う前に、薬で抑えてしまうのはもったいないと思います。病院に連れて行くか行かないかではなくて、本当に必要かどうかを見極める。そのために、猫はどうしたいのかをよく“感察”することが大切なんです。
◆老猫とのつきあい方、送り方
──今、老猫の介護はキュアよりもケアへ傾いているとおっしゃっていますね。
キュアは治療で、ケアは介護やお世話という意味。小手先の技術的な治療よりも命に寄り添うということが大事です。例えば、病気ではなく「老衰」で死んでいくというときは、もうどうしたって抗えません。長生きさせるのは、誰のためかということです。猫はおそらく、美味しいごはんは食べたいと思っているけど、長生きしたいなんて思っていないのではないでしょうか。死を恐れるのは人間だけで、彼らはそれを受け入れる。ところが、私たちはこの猫を失ったら「可哀想な私」になってしまいます。病院に連れて行くのもそうですが、どこかで「猫のため」と「自分のため」をすり替えているように感じます。
猫が望むことは、猫と話し続けていたらわかると思います。「病院には行きたくない」とか「食べたくない」と、ちゃんと猫たちは伝えてくるので、それを受け止める。日頃から話して“感察”を続けていれば、見送るべき時もきっとわかります。
◆「ペットロス」ではなく、「さよなら、またね」
──最終章の福ちゃんの旅立ちには涙しました。どんなふうに最後を送ってあげたら猫たちは幸せでしょうか?
それは猫によって違うと思います。引き留めず、その子がいきたいときにいかせてあげられる、さよならじゃなくて、向こう側に送り出す、そういう感じです。看取りというと、ちょっと上から目線になってしまうので、「いってらっしゃい、また会おうね」と向こう側に送り出せるような成熟度がこちらも必要になると思います。「いかないで」ではなく、「ありがとう、楽しかったよ、また会おうね、いってらっしゃい、おめでとう」って送り出せるのが素敵だと私は思います。
【南里秀子(なんり・ひでこ)】
1958年生まれ。1992年、猫専門のシッティングサービスを創業。猫の生涯保障部門を開始し、「猫の森」としてシッター育成や猫に関するセミナーを展開している。2009年に世界初、キャットシッターの視点から猫について解明する『猫の學校』セミナーをスタート。著書に『猫の森の猫たち』(幻冬舎文庫)『猫と暮らせば』(小学館文庫)『猫と人と古民家と』(幻冬舎)など。