──放送後、この『シューベルトの魔王道』を真似する子どももいたそうです。音として、とても強く印象に残る体験だったのではないでしょうか。
アボ:知らないものと出会う「事故」が起こったということですね。大人が考える、子どもにとってよきものにならないように、あきらめずにディテールまでこだわったかいがありました。歌詞を本物のラップにするだけでなく、鳴っている音も本物にするために、ミックスダウンなどの音響調整をするレコーディング・エンジニアも、クラブミュージック専門の方にお願いしたんですよ。
──そもそも、シューベルトの「ムジーク」を担当することになったのは、どんないきさつからだったのでしょうか?
アボ:『クラシカロイド』監督の藤田陽一さんは、以前から僕のDJを気に入ってくれていて、イベントにも遊びに来てくれています。だから、僕がどんなDJで、どう考えて物作りをしているのかを知っています。そういったベースがあったので、『魔王』のムジークを作るならばと考えたとき、想像する音楽に近いものをつくれるだろうと見込んでくれたのではないかと思います。
──大ヒットアニメ『銀魂』や『おそ松さん』でもそうでしたが、藤田監督はチャレンジし続ける監督なんですね。作中のシューベルトの印象を一曲でガラリと変えねばならない、かなり難易度が高いボールが投げられましたね。
アボ:ちゃんとバットで打てたかなとは思っています(笑)。これほど徹底して本物のラップに聞こえるように作り込むことは、外側からはムダに見えたかもしれません。でも、僕はポップス的なものは作れない。僕が頼まれたということは、徹底して本物を作り上げることだと解釈しました。