──生みの苦しみがありながらも『魔王』ラップは楽しい創造だったことがわかります。
アボ:ただひとつ、他のムジークを担当された皆さんと違って、僕は担当するムジークが放送されるまで、内緒にし続けなければならなかったのはつらかったですね。それまでシューベルトはムジークを発動させても、原曲に忠実なものでした。でも、『魔王』のムジークは大きく違う。違うことがストーリーの重要なカギになっていたので、僕がアレンジを担当するとわかってしまった時点でネタバレになってしまいます。だから、『シューベルトの魔王道』が流れる第21話の放送が終わる3月4日の17時55分が過ぎるまで、ずっと黙っていなければならなかった。お話をいただいてから半年くらい、秘密でした。
──今回のようにクラシックとヒップホップなど、異なるジャンルをつなげることはDJならば誰でも得意だといえるのでしょうか。
アボ:DJにもいろいろなスタイルがあるので一概には言えませんが、僕の場合は昔から、何でもありでいろんなジャンルの曲をかけてきました。ただし、ジャンルの壁を越えるとことと、他人の文化に土足で上がるというのは違うことだと考えて、常に意識しています。取り入れようと思った知らないものに対しては、きちんとその文化を愛し、関わる人たちと同じ釜の飯を食うような交流を続けて理解を深めるようにしています。そうして、ジャンルの幅を広げてきました。漫然と過ごしていたら出会わなかったかもしれない文化や人、いろいろなものをつなげられるのがパーティでありDJだと思っているので、そのためのチャレンジはこれからも続けていきます。
●あぼ・かずひろ/青森県八戸市生まれ。東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。1998年よりDJ/トラックメイカーとして活動を開始。学生時代に始めた幼稚園・保育園DJはライフワークとなっている。全国津々浦々のクラブはもちろん、村祭りや商店街、都内、地方など様々な場所でDJを続けている。サウンドクリエイターとしてもダンストラックのみならず、美術作品のための音響製作やファッションショーや映像作品のための音楽・音響制作も手がける。2013年からは、DJスクール「桜木DJアカデミー」を立ち上げ、DJ講師としても活動中。「ティーンのパーティは足代だけでするよキャンペーン」はhttps://twitter.com/abolabo/status/849557062619205632