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プリウスPHV 仕立ては良いが宝の持ち腐れの懸念も

 燃費は非常に良い。651.1kmを走り、燃料消費は14.2リットル(L)。トータルの燃費は45.85km/Lに達した。そのうち208.8kmは充電電力で走ったので、それを差し引くと31.14km/Lとなるが、それでも立派な数値である。充電後、EV走行で登り坂を走ったことで燃費がかさ上げされた部分があったが、それを差し引いても20km/リットル台後半は堅いところだろう。

 EV走行の航続距離も素晴らしいものがあった。東京の靖国神社近くからフル充電状態で出発し、エアコンオフでどこまで行けるかを試してみたところ、川越街道がかなり混雑していたにもかかわらず、埼玉の川越を越え、鶴ヶ島手前の59.7km走行時点でEVモードからハイブリッドモードに切り替わった。

 帰路には神奈川の相模原で80パーセント急速充電を行い、エアコンON状態でEV走行してみたところ、帰着地までの47.9kmをEV走行のみで走り切り、なお計器表示で2.2kmの航続残があった。エネルギー効率はハイブリッド、EVの両方で第一級の水準にあることは間違いないところだ。

 が、筆者がクルマの出来の良さに感心したのは、エコ性能ではない。プリウスPHVの真価は、安定性が高く、操縦が楽しく、乗り心地も良いというファントゥドライブ性にあった。ドライブ中、2か所の長い峠道を走ってみたが、プリウスPHVはトヨタ車の中でも屈指のフットワークを持っていた。

 基本的には乗り心地重視でバネは柔らかく、ふわつきもあるのだが、それにもかかわらずぐらついたりブルついたりといった不快感がない。安定性も素晴らしく、急カーブが連続する区間でも安心してハイペースを維持できた。

 筆者はプリウスPHVに乗る直前、同じトヨタのコンパクトSUV「C-HR」で長距離ドライブを行った。

 C-HRは走りの性能を売りのひとつとするモデルだが、実際のドライブでは安心感、楽しさの両面でプリウスPHVのほうがはるかに上を行っていた。こうした仕立ての良さは、ハイブリッドカーの延長線上にあるPHEVでのこれ以上の失態は絶対に許されないと考え、エコを言い訳にせず、クルマとして文句なしのものに仕立ててやろうとした開発陣の執念のたまものであろう。

 だが、そういう開発陣の血のにじむような努力は、トヨタという企業のクルマに対する考え方の偏狭さを浮き彫りにすることにもなった。

 ミスターハイブリッドを自任する“技術のドン”内山田竹志会長は、プリウスPHVの記者発表で「エコカーの本命でありカナメとなるクルマ。これからの主流になる」と、エコカーとしての側面ばかりを強調していた。

 発売と同時に大々的にテレビCMを流し、2か月が経過した今もそれを継続するという異例の力押しPRを展開しているが、「らーらそらーみーそーらー」という歌が耳に残るそのCMも、エコイメージ一、アースコンシャス(地球第一)一辺倒。クルマとしてのまとまりの素晴らしさはそこからは伝わってこない。走りをトヨタ屈指のレベルに磨き上げた開発陣が可哀想に思えるほどだ。

 また、経営側がクルマのエコ性能を上げることで満足しきってしまい、PHEVをPHEVらしく使ってもらうという取り組みはほとんどみられないのも残念なところだ。

 今回のプリウスPHVは、最低グレードでは追加オプション、その他は標準で急速充電のためのソケットが備えられている。公称値では20分で80%充電ができるとされているが、ドライブ中に何度か計測してみたところ、バッテリーの使用範囲の80%に達して自動で充電が終了するまでの時間は18分強。

 そういう装備を持っているにもかかわらず、実際に購入したユーザーやレンタカーで借りたユーザーがプリウスPHVで急速充電を行う機会はまずないだろう。

 トヨタが用意している充電サポートサービスは、急速充電を20分行った場合で324円かかるためだ。現在のガソリン価格の相場であれば、ガソリンで走ったほうがはるかに安くつくのである。フル充電までに2時間20分がかかる普通充電は月1080円払えば使い放題だが、長時間滞在する場所に充電器が都合よく設置されているというケースはほとんどない。

 PHEVは自宅近辺ではEV、遠乗りはハイブリッドとして使えばいいので、出先で充電をしなくてもユーザーは困りはしない。が、PHEVは普通のハイブリッドに比べて高価で、単にEV走行による経済メリットだけではとても価格差を取り戻せるようなものではない。普通のハイブリッドに対してPHEVが特別でいられるのは、充電電力でEV走行している間だけだ。できるならば、出先でも電気で走りたいに決まっている。

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