もっとも、公共の充電施設にPHEVが殺到すると、EVとの充電競争で喧嘩が起きかねない。実際、急速充電が無料で使えていた時代は、日産「リーフ」と三菱「アウトランダーPHEV」の間で小競り合いが頻発するというさもしい話が飛び交っていた。
そういう事態を招かず、PHEVを適宜急速充電できるような環境を作るのは、お金はかかるが簡単だ。日産がやったように、トヨタもディーラーに大々的に急速充電器を設置すればいい。
リーフでツーリングをしているときには旅の途中、日産ディーラーの看板が見えると「あそこには充電器がある」と、喜びと安堵感を覚えるものだった。プリウスPHVでもそれをやれば、ユーザーはトヨタ系ディーラーの看板を見るとうれしくなることうけあいだろう。が、トヨタはそういうインフラ整備を行う計画を持っておらず、急速充電は宝の持ち腐れだ。
プリウスPHVはクルマとしてはとても良いものに仕上がっている。が、トヨタの新エネルギー車の普及に対するグランドデザインはそれに追いついていない。
テレビCMにある「すぐ普通になる、今は特別なプリウス」という言葉を早期に現実のものにするには、EVのインフラづくりにもう一歩大きく踏み出すべきではなかろうか。
文■井元康一郎(自動車ジャーナリスト)