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ドンキ安田氏vsHIS澤田氏 投資会社精算巡る大バトル

◆「説明責任は果たしている」

 かつての“仲間”からの批判に対し、澤田氏はどう答えるのだろうか。

「前提として理解していただきたいのですが、私がVCを引き受けたのは、株主の方々から“潰すのはもったいない。引き受けてくれませんか”と頼まれたからであり、私自身がVCを存続させたいと考えていたわけではありません。

 “頑張って経営してほしい”くらいは言いましたが、HSAの経営は従来の(VC時代からの)経営陣に任せており、私はタッチしていませんでした。清算という結果になりましたが、これは経営陣が事業を精査したうえで決めたことです。株主には役員が面談ないしは電話で説明しており、説明責任は果たしたという報告を受けています」(澤田氏)

 多くのグループ会社を抱える澤田氏にとっては、「他に優先すべき事業があった」という。HISが2010年に支援を開始(同年子会社化)したハウステンボスの再建もそのひとつだ。

「現在は年間100億円の利益が出る事業になりました。それと比較すればHSAの経営に目が行き届かなかったのは事実かもしれない。ただし、それはHISの経営者としての判断ですから、批判されるものではないと思います」(同前)

 死亡していた社長名で株主総会開催通知を送ったことについてはこう説明する。

「臨時株主総会の招集は、3月9日にA氏が議長を務めた取締役会で決定しています。存命中の権限に基づく招集決議ですので、正当な手続きであるとの説明を弁護士から受けています。

 ただ、清算の結論に至ったことが拙速であるという批判は受け止めますし、安田さんがお求めであればシンガポールでもどこでも説明に伺いたいと思います。また、HSAを存続させたいと手を挙げる方がいらっしゃったら、(清算の)方針を変更して譲渡することも考えたい」

 ベンチャー経営者はそれぞれに個性的だが、共通するのは「収益に貪欲である」という点だ。安田氏にしてみれば、「ベンチャーの雄」と認める澤田氏が赤字経営を放置していたことに納得がいかない。逆に澤田氏の視点に立てば、収益が見込めない事業に拘泥する安田氏の考え方とは相容れないということだろう。

 かつて夢を共にした2人の対立は解消されないまま、野心に溢れた起業家が集い交わった“梁山泊”は、その役割を終えることになる。

※週刊ポスト2017年5月19日号

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