東京都港湾局は視察船「新東京丸(195トン。定員60人)」を保有しているが、老朽化しているため今回の建造が持ち上がったわけだが、そもそも、東京都に「視察船」という名のクルーザーは必要なのか。
就役中の新東京丸は平日2回、竹芝桟橋から1時間半かけて東京港内を周回している都営の“クルージング船”だ。都民でなくても無料で乗船できるが(要予約)、土日は「民間遊覧船の経営に影響する」(港湾局)という理由で運休する。そのうえ、改修費が毎年約5000万円かかっている。
都政を監視する「行革110番」の主宰者で、元都議の後藤雄一氏は「代替船は無用」と指摘する。
「東京都が視察船を持つ目的がはっきりしないし、なくても困ることはない。五輪を口実にすれば建造予算が通ると思っている税金の無駄遣いの典型です。小池知事は豊洲市場や五輪施設では細かい部分までコストや必要性を精査して都民に開示しているのに、この新造船にひとことも触れないのは不可解です。仮に、どうしても五輪での接遇に必要というなら、その期間だけ民間の遊覧船をチャーターすれば済むはずです」
もっとコストがかからない方法もある。実は海上保安庁は、上甲板に30人の会議室、2階に控え室付きの貴賓室を設けた迎賓船「まつなみ」(全長38メートル)を保有し、普段は東京湾で巡視艇として使われている。海上自衛隊には130人の船上パーティ設備と同時通訳設備付きの会議室を持つ、さらに大型の迎賓艦「はしだて」(特務艇。全長62メートル)があり、横須賀管区に配備されて、内外の要人を招いた式典などに使われている。