現在、なぎらは東京・吉祥寺のライブハウス『MANDA-LA2』で月1回ライブを行なっている。これは37年間欠かさず続けているものだ。その他、各地でコンサートを開いている。
仕事量としては新聞、雑誌でのエッセーの連載、タレントとしてのテレビ、ラジオ出演の方が多い。だが、それでも、なぎらが自称する肩書きは「フォークシンガー」である。もはやフォークソングは過去のものではないのか?
「そういう風に言われるんだったら、フォークシンガーだと胸を張って言いたいね、逆に。冗談じゃねえと。死んでいったのはフォークもどき、似非フォークだと。私は今も民衆の歌としてのフォークソングをやっているよと」
言葉に力がこもった。あえて「フォークシンガー」という看板を背負うことも、時代への抵抗なのかもしれない。
●なぎら・けんいち/1952年、東京都生まれ。フォークソングに傾倒し、1972年にアルバム『万年床』でデビュー。以後歌手としてライブ活動を行なう他、俳優としてドラマや映画、タレントとしてラジオやバラエティ番組に出演。また、『下町小僧』、『東京酒場漂流記』(共にちくま文庫)など下町や酒場をテーマにした書を数多く執筆している。現在、『ごごナマ』(NHK総合、月~金13時5分~)の木曜日にレギュラー出演するほか、『月刊日本カメラ』で写真付きエッセイ「町の残像」、『月刊デジタルカメラマガジン』で「酒場の情景」、『東京スポーツ新聞』水曜日にコラム「オヤジの寝言」を連載中。
■撮影/吉場正和 ■取材・文/鈴木洋史
※週刊ポスト2017年5月19日号