「年をとった人の葬式では、死者を送るという荘厳な場であっても、思わず吹き出すようなことも起こりうる。その死を巡って、家族が大騒ぎする様子を可笑しく描けないかな、と思ったんです。
死があるけど、可笑しい。それは大きな勝負だろうとも思いました。ただ、死をテーマにした面白い喜劇は色々あるんです。ヒッチコックにも、フランク・キャプラにもある。
僕の大好きなイギリスの喜劇『マダムと泥棒』では、主演のアレック・ギネスを含め出演者のギャングが全員死んじゃうけど、それでいて可笑しい。そんなことを思い浮かべながら物語を考えました」
家族のドラマを描き続けてきた山田だが、実は、東京大学を出たばかりの頃に目指したのは、イタリア映画のフェリーニやヴィスコンティだった。
「穏やかなホームドラマなんてくだらないとずっと思っていました。若いときは、誰でもそうだし、そうあるべきじゃないのかな。いまでも、20代、30代の監督が家族の姿を丁寧に描くなんてことは、むしろやるべきじゃないと僕は思うけどね」