夏目雅子(『フラッシュバック』2001年・アイネットワークより)
「ファッションを撮っている頃、ヘアメイクや編集者が、モデルを1分ごとに『綺麗!』『かわいい!』と盛り上げていたんですよ。そんな不自然なこと恥ずかしくてできないな、と思っていたから(笑い)。
篠山や加納典明のように話術でグイグイ攻めていく感じでもないしね。僕のような写真家もいていいんじゃないですか」
小栗香織は自ら沢渡を指名し、2000年に『十一年後』というヘアヌード写真集を出版した。撮影時に、小栗が「2人だけで撮ってほしい」と懇願。マネージャーやアシスタントは撮影現場から退いた。女優の心を掴むテクニックがあるのか。
「そんなものはないですよ(笑い)。僕からそう頼むことなんて、まずありません。だって、言って叶うわけじゃないし、性格的に根回しとかできないんですよ。全て言われたことを受けるだけ」
自然体が女性の心をほぐし、良い写真が生まれるのか。
「小栗さんは、例えるなら海のイメージでしたね。撮影中は特に言葉を交わすことなく、彼女が口に指を入れれば、僕がそこにカメラを向けるという感じ。2人でストーリーを展開させていきました。その後も3冊の写真集を作り、女性ファッション誌では妊婦姿も撮った」
撮影■沢渡朔
※週刊ポスト2017年5月26日号