ある企業の元経営者の葬式では、お棺の中で眠っているはずの故人に、店頭にあるような等身大パネルとなって出迎えられ、「ぜひ一緒にお写真を」と促されたという人もいる。パネルの周りは、故人の足跡や思い出の品がまとめれらたメモリアルスペースになっていたという。
葬式での写真撮影は不謹慎と受け止められかねなかったが、今では「参列者揃っての集合写真撮影」を呼びかけられることも、決して珍しくはないのだ。
その気がなくても、故人と「最後の対面」をしてしまうこともある。かつて、最後のお別れは近親者のため時間で、その際には葬儀スタッフが「ご家族の方はお集まりください」と声をかけるのが常だった。故人との距離感によっては、望まない人もいるのだ。
「高度成長期には故人を直接知らない参列者が7割もいましたから、その声がけは当たり前でした。しかし最近は小規模な葬儀が多く、参列者のほとんどが近親者のため、特に制限を設けず対面を行なうことが一般的になっています。すると、さほど親しくなく、そのつもりがなかった人が『見なきゃいけないのかな』と戸惑いながら、流れで対面することになり、困惑することがあります」(葬送ジャーナリストの碑文谷創氏)
※週刊ポスト2017年5月26日号