絶対に笑ってはいけないとされる葬式の場で、それでも思わず参列者の苦笑を誘ってしまう「おかしな葬式」。個性的すぎる演出やオプションに戸惑う人が増えているのだという。
親族を中心に集まった友人の家族葬に参列した60代の男性は、お棺に花を捧げ、隅の方から故人の顔を見つめながら心の中で思い出に浸っていた。すると突然、葬儀社のスタッフから「(遺体に)声をかけてあげてください」と言われたのだ。男性はその声ですっかり現実に引き戻されてしまったという。
「ご家族の方々は、ご遺体の耳元で最後の思いを伝えていましたが、その近くに行って私が声に出して伝えるべき言葉が急には思い浮かばず、『ありがとうございました』と上ずった声で言うのが精一杯でした。どうしてもっと静かに見送らせてくれないのかと思いました」
参列者が戸惑ってしまうほどのサプライズ演出を繰り出し、葬式をイベント化する。有限会社佐藤葬祭の佐藤信顕代表取締役は「ごく一部」としながらも、やはり“目に余る例”はあるという。たとえば故人へのメッセージを寄せるホワイトボードや大きな色紙。
「ボードは真っ白で誰も書こうとしていませんでした。急に『一言を』と言われても困るし、みんなから見えるボードに率先して書くのに躊躇する人は多い。余白が目立つので葬儀スタッフがペンを持って参列者一人ひとりに依頼していましたが、そこまでするくらいならボードは必要ないでしょう」(佐藤氏)
参列者全員にカードが手渡され、故人に捧げるメッセージを書いてほしいと求められることもあるという。