映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、劇団員としてキャリアをスタートした役者・伊武雅刀が、「声」の仕事で脚光を浴びた経験が、その後の芝居にどのような影響を与えているかついて語った言葉を紹介する。
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伊武雅刀は高校在学中の1967年、NHKドラマ『高校生時代』の学生役で役者としてデビューしている。
「経済的な事情もあり、大学には行かせてもらえない環境でした。それなら、役者でも目指せば、上手くいったら人生としてなんとかなるだろう、と。
当時は高校生で、親の都合で名古屋にいたのですが、そんな時に新聞を見たら小さな劇団の募集があり受けることにしました。たまたまその講師をしていたのがNHK名古屋のディレクターの方で、『高校生時代』というドラマを手掛けていて。それで、出ることになりました。
演技としては、一番ナチュラルにできていた時期だったと思います。怖いもの知らずですし、そもそも演技というものを知りませんから。しかも、ドラマに描かれているのは高校生の実態です。学校のトイレでタバコを吸うような不良の役で、私自身もそれで先生につかまったことがあるから、自然にできるんですよね。煙が出ないようにタバコを吸うコツなんかも分かっていましたから、それをやってみるとリアルになるんです」