その後、伊武は上京、劇団を移り変わっていくことになる。
「このまま名古屋にいてもダメだなと思い、学校を辞めて東京の劇団の養成所を受けました。劇団雲です。なぜ雲を受けたかというと、いちばん好きな山崎努さんがいたというのと、芥川比呂志さん、神山繁さん、小池朝雄さん、高橋昌也さん──映画の脇を固めている方々がたくさんいらしたからです。そこに入れば映画界に入れる、俺の未来は決まった、と思いました。
でも、養成所ってそう簡単には出させてくれません。一年で『君はいらない』と言われ、今度は俳優小劇場の養成所に行きましたがそこでも馴染まなくて半年で辞めて。それで自分たちで小さな劇団を作り、貧しい新劇生活が始まっていきました」
最初に頭角を現したのは声の仕事だった。ラジオDJに始まり、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』などの声優、ナレーター、ラジオコメディ『スネークマンショー』など、インパクトの強い声で知れ渡っていくことになる。