◆“領収書デート”に悪びれない理由
ところが。朝目覚めると、洋輔さんから陽気なラインが入っていた。<昨日はとっても楽しかったね! オレはぜんぜん話し足りなかったよ。次は、職場の近くに最近できたステーキ屋にどうかな、絶対美味しいから!>
「なーんだ、彼は一緒に食事に行く人がいなくて、私がちょうどいい相手なんだな、と思いました。会社のお金で食べるわけだから、懐も痛みませんしね。でも私は、未来のない人と遊んでる暇はない! と断ろうと思ったのですが……、好きな気持ちがあったので、つい行っちゃったんです」
またもや洋輔さんが領収書をもらう場面を見たアリサさん。その後、何度か同じような状況を目撃した。2人で会っている時間は楽しい。けれどこれは、“領収書デート”なんだ……。ざわつく気持ちを押さえられなくなったある日、ついに言葉に出した。
「私が気付いてないと思ってるかもしれないけど……、領収書もらってるよね」
すると、さらに驚いたことに、洋輔さんは明るくこう言い放った。
「そうなんだよ! 自慢じゃないけど、オレの会社って、いま業績がよくて、けっこう交際費が使えるんだよ。オレ自身が、使えるポジションに付いてるってのもあるし。実際、アリサちゃんと話してると、仕事のヒントにもなるんだよね。そういう男のステータス的なことを自分から話すのって、オレ的にはイタイから言わなかったんだけど、気付いてたなら言うね。
結婚しても会社のお金で美味しい物が食べられるように頑張るから、安心してください! もちろんアリサちゃんが働くのは賛成だけど、ずっと綺麗でいてほしいから、アリサちゃんにはできるだけ自分を磨くことにお金をかけてもらいたいと思ってる。
あ、俺はもう付き合って、できれば結婚を、って気になっちゃってたんだけど、、、先走ってたらごめん」
照れて笑う洋輔さんをよそに、アリサさんはわけがわからなくなっていた。