慶應大学法学部教授、思想史研究家の片山杜秀氏


片山:現実と仮想の区別がつかないのが“あたり前”になった時代のシンボルが宮崎勤ですね。今ではオタクは、日本政府が推し進めるクールジャパンにつながるカルチャーとして認知されていますが、オタクが初めて本当に注目されたのは宮崎事件でしょう。

 実は、私も宮崎が通っていた高円寺のレンタルビデオ店を利用していたし、自室は宮崎勤と同じくビデオテープの山でしょう。同類扱いされて社会から排除されるのではないかと心配しました。実際、院生のかたわら講師をしていた慶應女子高の生徒に、宮崎勤っぽいと言われたりしました(笑)。それなら説明してやるということで、慶應女子高の現代社会の授業で「オタク誕生史」をやりました。

佐藤:当時、宮崎事件はオタク文化や引きこもりの文脈で語られましたが、犯罪は時代によって意味づけは変わります。もしもいま宮崎事件が起きたらサイコパスとして扱われるのではないでしょうか。

片山:そうかもしれません。宮崎事件の頃と思いますが、大井町の名画座で、1962年に製作された『二十歳の恋』というオムニバス映画を見ました。日本、西ドイツ、フランス、イタリア、ポーランドの5か国の監督がそれぞれの国の20歳の恋をテーマに撮影したオムニバスです。

 フランスの監督がトリュフォーで、イタリアがロッセリーニ。そして日本が石原慎太郎。ほかの国はいかにも初々しい市民社会で受け入れられる恋を描いていたのですが、日本だけが違った。ストーカー映画だったんです。

佐藤:時代を先取っている。

片山:さすが石原慎太郎です。工員が女子高生に一方的に恋をしてつけ回す。向こうも自分が好きだとなぜか確信している。最後は嫌われたのに逆上して強姦して殺してしまう。それが日本の『二十歳の恋』だった。

関連キーワード

トピックス

オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン