一般墓地のように継承者が要らないのも、人気の理由だという。それにしても使用料が安い。一般墓地に比べて「大事にされない」故人が埋葬される率が高いのか――と聞くと、即座に否定された。

「お参りに来る人は、むしろ一般墓地より多いと感じます。毎年、5月4日のみどりの日に、樹林・樹木墓地の『献花式』を行っていますが、今年も約800人のかたがたが参列されました」(八馬さん)

 訪れたのは平日。取材が終わった午後3時から2時間、参拝所に居残ったところ、4組6人の墓参者がやって来た。

 世田谷区から来た女性(58才)は、4年前に亡くなった父が樹木型墓地に眠っているという。「姉が『抽選に当たりっこないから』と申し込んだら、当たっちゃって。見に来たら、開放感があって素敵で、進歩的だった父にふさわしいと思ったんです」

 出来る限り、月命日に墓参しているという。「父は元教員。晩年は傾聴ボランティア活動を熱心にしていたので、大勢がご一緒のこのお墓の中で、またリーダーになって楽しくやっているんじゃないかしら。父がご一緒させてもらっているかたがた全員に手を合わせていますよ」と、にこやかに話してくれた。

 母の日の直前だった。「今日、仕事が急に休みになったので」と赤いカーネーションのアレンジメントを手に、杉並区から来た男性(29才)は、「還暦前に、急に、だったんです」と3年前に逝った母のことを少し語り、「この春(自分に)子供が生まれたんですが、母に見せたかったとか思いますね」。

 この墓地は、父が決めた。「たぶん、単に普通のお墓を買うお金がなかったからでしょ」と言う一方で、「手を合わせる気持ちは、普通のお墓でも樹木葬でも変わらないと思います。父と近所に住んでいても滅多に会わないのに、ここでばったり2度も会った」と語った。

※女性セブン2017年6月15日号

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