『太陽の帝国』は後にバットマンを演じるクリスチャン・ベールが子役として主演、他にジョン・マルコビッチなどのハリウッドの役者が出演している。
「ハリウッド映画を観ていると、役者のレベルが全然違うと思っていました。ですから、どこまで通用するかなと思いました。
魅力的な演技をすると感じたのは、ジョン・マルコビッチですね。完全に役に入っていて、ホテルも他の役者とは別のところに泊まっていました。クリスチャン・ベールも演技の先生がつきっきりでいて、役作りのために現場で全く口を利いていませんでしたね。出番が終わった時に初めてこちらに飛んできて、やっと日常会話ができました。
彼らは与えられた役に真摯に向き合って現場に臨んでいましたが、大したことない役者は大したことないんですよ。そこは世界共通なんだなと思いましたね。毎日のように徒党を組んで飲み歩いたり、パーティを開いたり、テニスをしたり、帰りたいと言って泣いたり。そういう役者は案の定、演技を見ても『お前たち、そんなレベル?』と思い、魅力的ではありませんでした。
俺は俺なりに戦いました。日本人として、『実際にはこういうことはしないだろう』ということには意見しましたから。殺陣師はハリソン・フォードを指導していたんですが、相手を六尺棒で叩かせたりするんです。軍人なら竹刀か木刀ですよね。それで『それはおかしい。監督に聞いてみてくれ』と言ったら、監督はこちらを採ってくれました。
ここでの経験は役者としての自信をつけさせてくれました」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。
◆撮影/五十嵐美弥
※週刊ポスト2017年6月16日号