今ではCD-ROM版でしか読めない大月書店の「マルクス=エンゲルス全集」は補巻を含めて全四十五巻に及ぶ。中で一番不人気の巻は第十四巻「軍事論集」であった。私がマル・エン全集で最初に買ったのは、この第十四巻である。だって、どこの文庫にも入ってないんだもの。友人たちからは変人扱いされた。しかし、おかげで「鹿砦」の読みも意味も知った。
1980年頃のことである。「風の旅団」と名乗る前衛だかアングラだかの演劇団体があった。「旅団」を旅する戦闘集団のことだと思っているらしい。それなら師団は日教組かなにかのことなのだろうか。旅団も師団も軍隊の単位である。前衛だのアングラだのと称する連中の程度が知れる話だ。
某過激派の最高指令者だった荒岱介(あら・たいすけ、故人、組織は解散)の回顧録『大逆のゲリラ』(太田出版、2002)に“新兵器”開発の話が出てくる。1980年末、火炎放射器を製造し、某県山奥で放射実験をしたところ、ガス圧が強すぎてノズルの制御ができず、仲間が大火傷を負ったという。兵器の基礎知識も満足ではなかった。
こんなことをいくつも思い出したのも、この三月末、日本学術会議が軍事目的での科学研究を行なわないという従来の方針を再確認したからである。愚かとしか言いようがない。平和を守り戦争を防ぐためにこそ軍事研究は万人に開かれなければならない。
警戒すべきは、軍事知識・軍事技術の機密化である。それを自ら進んで後推ししていることになる。左翼的な青年はもちろん、平和主義的な青年も、防衛大学や自衛隊へ入る際にはチェックされる。そちらの方こそ批判しなければなるまい。