住み慣れた我が家から旅立ちたい──そう願う人は5割に上る(内閣府調査)が、現実には亡くなる人の8割が病院や診療所などで死を迎えている(厚労省調べ)。在宅死は贅沢な望みなのか。
「決してそんなことはありません。一人暮らしでも、認知症であっても、家で最期を迎えることはできます」
そう話すのは、1000人以上の在宅看取りをしてきた小笠原文雄医師(日本在宅ホスピス協会会長)だ。小笠原医師が上梓した書籍『なんとめでたいご臨終』には、死を迎える人や見送った家族、そして在宅医療チームが集まってピースする“記念写真”が多数掲載されている。
35歳という若さで胃がんと卵巣、肺への転移が見つかり、主治医から余命3か月と宣告された堀純子さん(仮名)。2人の幼子を残して逝く無念さを内に秘めつつも、まっすぐ前を見て笑顔でピースしている。
そんな堀さんも、小笠原医師が最初に往診したときは、何を聞いても「死にたい」と繰り返すばかりだった。意を決して、小笠原医師はこう語りかけた。
「『死にたい』っていうけど、この中で一番最初に死ぬのは誰だと思う?」