室井:ご飯を食べさせて、添い寝しているひと月の間に、いろんなことを考えました。自分はキンちゃんに長生きしてほしいから、お医者さんに預けた方が治るんじゃないか、と思ったりするんです。でも、高齢の猫に何をしたって、かわいそうなだけだから、この子にとっていちばん苦しくない状態は何か、少しでも痛くない状態で上手に死んでいってくれたらいいなと、それだけを願うようになっていきました。
小笠原:そうなりますよね。
室井:それで病院が猫のための酸素マスクを貸してくれたんですけど、音がうるさいので途中で使うのをやめていたんです。猫は耳が敏感だから、かわいそうかなと思って。
小笠原:それは賢い選択ですね。いのちを助けるためには酸素がいるけど、亡くなっていく人は酸素が少なくなると脳の活動が低くなって苦しさを感じなくなるから、与えない方が楽に死ねるんですよ。
室井:えっ、そうだったんですか。それならよかった。私はもう介護に疲れてグワーッと横になっていて、その猫用の酸素マスクを自分がつけていました(笑い)。スッキリするので、やっぱり酸素はいいわー、買おうかな、なんて思いながら。
小笠原:ハハハ、あなたは生き抜かないといけないからね。
室井:それで亡くなった時は、夜中にふんふんって起こされた気がして、ふと見たら、キンちゃんがこっちを見ているんですよ。「キンちゃん、大丈夫?」って言ったら、はあはあって言って、すうーっと死にました。私が目を覚ますのを待ってたの。
小笠原:人間も、会いたい人が駆けつけるのを待ってから亡くなるケースがよくあるんです。
室井:亡くなった時は、ものすごく悲しいけど、ホッとした感じもあって、かわいそうなことにならないで逝ってくれてよかったなという気持ちになりました。
小笠原:それは猫ちゃんからしたら、愛する人のそばで苦しまずにあの世に旅立てたんですから、よかったと思いますよ。おや、シゲちゃんが私のために泣きながら、でも、ホッとしているから、私も笑顔で旅立とうかなって。
※小笠原文雄先生が7月17日、「なんとめでたいご臨終の迎え方」をテーマに、東京・小学館で講演会を開催。
詳細はhttps://sho-cul.comで。
撮影/横田紋子
※女性セブン2017年7月13日号