懸賞広告の性格については、契約が成立するとする考え方と広告主の一方的な行為であるとする見解がありますが、いずれにせよ、指定行為者に対し、広告に従った報酬を与える義務を負います。
あなたの場合も同様で、当選したのですから、主催者は報酬であるオリジナルグラスを渡す義務があります。ただ、これから先が問題です。指定行為に経済的価値等があれば、報酬はその対価です。プレゼントは完全なものでなければなりません。
ですが、経済的価値のない行為だとプレゼントは一種の贈与です。贈与では贈与者が欠陥を知っていながら、黙っていたときにだけ賠償の責任を負います。主催者が諦めろというのは、この考え方です。それでもイベントに参加し、はがきで応募するという行為をしているのであり、一方的に恩恵を受ける普通の贈与のように考えることはできません。
よって広告で約束したことであり、懸賞広告の一種だと考えると、主催者には壊れていないグラスに取り替える義務があると思います。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2017年7月21・28日号