小笠原:機器さえつければ、生きられる。でも、意識はあるのに身動き一つできない。そういう状況がいいのかどうか。それを望まれるかたは機器をつければいい。でも、望まないかたにもつけるのはどうでしょう。実際は望まないかたが多いですよ。
上野:それは基本的な死生観に関わると思いますね。住み慣れた我が家に戻るということは、高度化した医療で生かしてもらうということではなく、日常生活を選ぶということ。死ぬ運命を受け入れるかどうか、という死生観に関わってきます。
小笠原:ぼくは患者さんに言うんです。「もし何かあっても、家で死んだら本望だと思えばいいじゃないの」と。そう言うとみなさん、結構長生きされるんです。不思議でしょ。
上野:家に戻った人はみんな言いますね、病院だと自分は患者だけど、自宅だと患者は自分の一部に過ぎない、と。
小笠原:誰でも最期まで家で過ごせる時代になりましたが、これからの時代は、家に帰ってから、朗らかに生きて笑顔で死ぬのか、眉間にシワを寄せて生きるのか。自分で決められる時代になってきたと思いますね。
撮影/杉原照夫
※女性セブン2017年7月27日号