たとえば、市川海老蔵さんの妻でフリーアナウンサーの小林麻央さんが亡くなったとき、実在の弁護士を騙るTwitterのアカウントが小林さんの親戚を詐称して死を悼む書き込みをし、その一文を見た善意の人も巻き込んで拡散された。この弁護士は、2012年に「2ちゃんねる」で中傷された男性の依頼で書き込み削除の依頼をしてから、ネット上で「ネタ」として扱われ続けている。
ネタにされ続けているこの弁護士は、Twitterのなりすましアカウントだけでも150近く存在する。そのアカウントによる爆破予告もたびたびおこなわれ、逮捕者も出ている。ところが、この弁護士を騙った悪質な行為はなくならない。それだけでなく、弁護士事務所ドアの鍵穴に接着剤を流し込まれたり、実家の墓にペンキでいたずらされたりと、現実世界にはみ出した行為が続出している。弁護士事務所の関係者は、ネットだけで盛り上がっていた段階ではなくなっていることに恐ろしさを感じると話す。
「2~3年くらい前から、弁護士を『ネタ』にするやりかたが一線を超えたなと感じています。4~5年前までは、どんな過激な言葉がネットで連ねられても、それはネット上を超えてこなかった。しかし最近では、彼に対する襲撃予告も現実にしようとする人が現れるても不思議はないのではないかと感じるほど、ネットのネタが現実にはみ出していると感じます」
ネット上で自分が見ている言葉の数々は、世間一般に受けいれられている考え方だと勘違いしやすい。賛同者が多いような気がして許されると思い込み実行する前に、その内容は、安心で安全な社会生活を脅かしていないか、現実に目の前にいる人に相談してからでも遅くはないだろう。