国内

未成年者の連れ去り事件 被害者の半数以上は自らついていく

子供が不審者に目を向けるのはかえって危険

 警察庁の2016年調べによると、犯罪認知件数は15年前から減っているのに対し、未成年者を狙う略取誘拐、つまり連れ去り事件は2013年以降増え続けている。

 男女別でいえば、わいせつでは女児が多いが、暴行・傷害の被害者は男女ほぼ同数。もはや「うちは男の子だから安心」という時代ではない。

 さらに、年齢別で見ると、未就学児より、通学時などに1人で行動する機会が多い小学生の方が多く狙われている。1人でいる時、それも通学時などの道路上や、放課後の公園などで子供は被害に遭っているのだ。

◆子供は自ら犯人についていくケースが多い

 では、子供はどのようにして被害に遭っているのか。連れ去り事件においては、被害者の半数以上がだまされるなどして自らついていっているという。

 幼い頃から、家庭や教育の現場において、繰り返し「知らない人にはついていかない」といった教育をしているにもかかわらず、なぜ犯罪者についていくのか? 立正大学文学部社会学科教授の小宮信夫さんは、“不審者”に目を向けるのはかえって危険だと警鐘を鳴らす。

「連れ去り事件の犯人は、いかにも“不審”な雰囲気で子供に近づくわけではありません。犯人は、どこにでもいる普通の人。清潔感のあるかっこうをしていて、やさしい顔とおだやかな声で、ごく自然に接触してきます」(小宮さん、以下同)

 例えば、子供を連れ去った犯人が、実際に行ったやり口について、小宮さんはこう続ける。

「1988年から1989年にかけて起きた東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件で、犯人である宮崎勤は巧妙に子供に接近していました。宮崎は最初の事件で、4才の幼稚園女児を、歩道橋の上からマンションの駐車場に停めておいた自分の車までついてこさせました。彼は歩道橋の階段を1人で上り始めた女児を見て、同じ階段ではなく反対側の階段から上り、偶然を装って歩道橋の上で女児と対面。しゃがんで目線を合わせ、“涼しいところに行かないか”と声をかけたんです。そして、“今来た方でいいんだよ”と言って、宮崎1人で先に歩道橋を下り、後から女児を自発的についてこさせたのです」

 偶然の出会いを装い、同じ目線まで腰をかがめて親近感をわかせる。そして、無理やり連れ去ることはなく、女児が自らついていく形にすることで、周りの住民に不審感を抱かせなかったのだ。

◆注意すべきは危ない人ではなく危ない場所

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン