ここからはデメリットだ。今はまだ「ディレクターなのに〇〇」というギャップが視聴意欲に作用しているが、これが見慣れてくると新鮮味も薄まってしまい、ギャップが埋まって“普通”になってくる。
先日の放送では部族の前でゴダイゴの『銀河鉄道999』や坂本九の『上を向いて歩こう』を披露。意外な歌唱力にSNS上は盛り上がった。こうした新たな魅力が毎週更新されていかない限り、いつかは飽きられてしまう。「薦められたらなんでも食べる」というお約束も「わかったよ。またか」となりかねない。マンネリは安心感を生む一方で「飽き」に転換しかねない危険をはらんでいる。
ナスD誕生の経緯は、U字工事が別仕事のため帰国中、同行していた友寄氏がいわば“間つなぎ”としてレポートすることになり、前述のように顔が変色し…と、偶然が重なったことにある。
深夜帯から好きで見ている視聴者は、「番組内スター」誕生の軌跡をリアルタイムで目撃し、応援してきたが、番組が繰り上がり、その経緯を詳しく知らない新たな視聴者からは「内輪ノリ」として揶揄される可能性もある。
放送開始半年でいきなりスターが生まれ、ピークを迎えてしまったことも悩みの種だ。しかし今のところは「ナスDの番組」という認識が定着しているため、メイン企画は彼に委ねるしかない。
しかし、あくまでもナスDはディレクターだ。どこかでナスDとしての自分に区切りをつけ、裏方に戻らないといけないだろう。そのときが、番組にとっては本当の勝負だ。半年に一度のスペシャルで復活させるというように、出し惜しみする戦略も考えられるし、『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)がデビュー当時のイモトアヤコをオーディションで選んだように、キャラの強く、素人に近い新人を発掘する企画を立ち上げたりもできるはずだ。新しいプランはいくらでも考えられる。
4月にスタートし、番組の地固めがまだできていないうちにプライム枠に昇格し、いきなり視聴率競争の最前線で戦うことになった同番組。真価が問われるのはこれからだ。 (芸能ライター・飯山みつる)