夢香さんが相談した相手は、暴力団員ではなかったが、いくつかの暴力団体関係者とも親しく、芸能界で一定の力を持つ男性だった。男性が社長に電話を一本入れると、社長からの恫喝めいたメールや電話はピタリと止んだ。止んだのはよかったが、社長はすでに、夢香さんの夢を潰すために、あらゆる手を尽くしていたのだ。
「私が覚せい剤中毒者で、男にだらしがないなどと、雑誌の編集部やモデル仲間、広告代理店関係者などに社長が触れ回っていたのです。その後、現在の事務所に所属するようになって、マネージャーが苦情を入れると、その嫌がらせもピタリと止みました。でも、悪い噂は出回るのが早く、ほとんど仕事が来ることはありませんでした」
インターネットの掲示板には、社長や社長の関係者が書いたと思われる、夢香さんについての虚偽の情報や、夢香さんの人格を否定するような書き込みが今も残っている。雰囲気を変え、名前も変えてやっとモデルとしての再出発できる兆しが見えてきた夢香さんは、同じような被害に遭う女性が増えないようにと訴える。
「私には夢がありました。でも、人格を否定され、奴隷のようになってまで夢を追う必要はありません。道はいくらでもあるし、体を壊してまで続けてはダメです。正しいと思ったことをやるべきです」
芸能界に生き残るために、そして潜りこむためには「汚いことをしなければならない」といった間違った認識も、若い女性の間に蔓延しているような向きさえある。芸能界は怖くて汚くて当然、だから自分も汚れてしまうしかない、そう思う芸能志望の女性がいるとしたら、一刻も早く考えを改めるべきだ。