相続税法の改正で、それまでの財産総額6000万円以上から3600万円以上の人まで課税対象となった(法定相続人が1人の場合)ため、これまで以上に多くの人が「節税せねば!」という気持ちになっている。墓や仏壇、仏具などは控除の対象になるので、生きている間に買うという節税法がある。だが、『やってはいけない相続対策』(小学館新書)の著者で、元国税調査官の大村大次郎氏はこういう。
「モノは購入した瞬間から価値が目減りしていきます。お墓はそれほど資産価値が下がりませんが、仏壇などは確実に下がる。仮に200万円の仏壇を買ったとしたら、買った時点で即100万円くらい下がります。誰かが使った仏壇を買おうと思う人なんて少ないからです。必要を感じていないのに買うのは間違い。
また、純金製の高額な仏壇仏具などの購入が節税対策になると指南するメディアもありますが、国税が“仏壇ではなく純金”と判断して課税対象にするケースもあります」
アパート経営やタワマン節税など派手に宣伝される節税法には落とし穴がつきものなのだ。大村氏は、最高税率が課されるような資産家(課税資産6億円超)でない限り、地道な対策で十分に対応できるとアドバイスする。
生前贈与の控除枠を利用して少しずつ相続させる手もあるし、併せて一時払い終身保険(保険料を一括で支払う生命保険)を利用するやり方もある。
「生命保険金は法定相続人一人あたり500万円までは非課税なので、これに加入し、受取人を妻や子にしておけばいい。妻と3人の子の計4人なら2000万円まで非課税になる。相続税がかかるかかからないかのボーダーラインの人にとっては、かなり有効です」(大村氏)