「昭和の一時期、漫才人気で、落語の火が消えかけたことがある。大阪人は実利的なところがあって、漫才は、やっぱりおもろいから中心になった。商人の町ですから『お金をはろた分だけ笑わしてや』みたいな雰囲気がある。それに負けんようにやらないと、大阪では生き残れない。お客様としては、東京のほうが洗練されていて、いいお客さんだと思いますよ。大きな笑いになりやすい。でも、そのお客様が、次来ていただけるかいうたら、それはわからない。でも大阪は、おもろかったらまた来たろみたいになる」

 ベテラン噺家たちの中には、テレビに出ている人間を蔑む傾向があるが、文枝はR-1だけでなく、盛んにテレビに出ることが大事だと若手をけしかける。日本で落語家は約800人に上ると言われる。そのうち、上方は250人ほど。江戸の寄席は落語が中心で漫才は「色物」と脇役扱いされるが、関西では逆。落語家が生きていくためには、テレビに出て、顔を売らなければならないのだ。

──これだけテレビに出ろ出ろという年配の噺家はそうはいません。

「東京は大阪と違って寄席がたくさんあるので、ファンの絶対数が違う。テレビに出ていなくても、券がすぐに売り切れる人気者がいる。そういうのんを、大阪からも出したい」

 ただ……、と続けた。

「テレビが裸っていうものをよしとして、ああいう芸を見せていくとなったときに、落語がどうすれば勝てるかっていう、明確な答えを持ってませんねぇ」

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