先祖の魂が帰ってくるといわれるお盆。この世に思いを残して去った人々の魂が今年も戻ってきたようです──。42才主婦のAさんが、自らに降りかかった世にも恐ろしい物語を明かしてくれました。
* * *
「ねえ、お母さん知ってる? うちの学校、出るんだよ」
夏休みのある日、小学4年生になる娘が夕飯の支度をする私に話しかけてきました。
「出るって、何が?」
「この間のプールの日に3階の女子トイレの水道から赤い血が出たんだって。学校中、大騒ぎ。先生は水道管がさびていたから、赤くさびた水が出ただけだろうって言うけど、みんな幽霊のせいだって言っているよ」
あー、この手の話、私が小中学生の頃にもあったなあと、その時は懐かしい気持ちで聞いていました。水道工事か何かで、水道から赤茶けた水が出ただけで、誰かの呪いとかそういう類の怪談話。
「はいはい、それより夏休みの宿題をしなさい」と私は娘の話を軽くあしらっていました。
娘が通う小学校は高台にあり、緑に囲まれ、おどろおどろしい雰囲気とは無縁。公園もいくつかあり、学校以外に建物はなく、非常に静かな場所です。しかし、気になることもありました。公園にはなぜか石碑が立っているのです。そして小学校の校庭の隅にも同じような石碑があるのです。
あれは何だろう…いつか担任の先生かママ友に聞いてみよう、と思っているうちに月日が経っていました。そんなあるお盆の夕暮れ。私は役所に戸籍謄本を取りに行き、帰りに娘が通う小学校の前を通りました。ふと校舎を見上げると、窓ガラスに赤いものがちらちらと見えます。
「何かしら…」と近寄ってみると、真っ赤な花のようでした。鮮やかな赤というよりは、黒みがかっていて、どこか不気味です。
悪趣味な飾りつけだなあ、と思って見ていると、赤い花が波打つようにうごめき始めました。そして、次の瞬間、私は自分の目を疑いました。花と思っていたのは…。
血に染まった赤い人間の手だったのです!
その手はまるで助けを求めているかのように、私の方に伸びてくるようでした。今にも窓ガラスを割って──。
恐ろしくなり、私は後ろを一度も振り返らずに、一目散に学校を後にしました。家に帰るとすぐに、ネットで小学校の場所や公園の石碑のことを調べました。そこにはこう書かれていたのです。
「この辺りは江戸時代、処刑場で多くの罪人が殺された」
あれは、ひどい死に方をした罪人たちが、私に助けを求めていたのでしょうか…。
※女性セブン2017年9月7日号