国内

高齢者介護ロボット・パロは“世界一の癒しロボット”

国立研究開発法人産業技術総合研究所が開発したアザラシ型のメンタルコミットロボット・パロ

 今年5月、日本医療研究開発機構(AMED)が、コミュニケーションロボットの効果を検証する大規模調査の暫定報告として「高齢者の自立を促す手段として効果が高い」と発表。いよいよロボットに介護を頼る時代の到来か…。

 介護現場でのロボットセラピーに詳しい首都大学東京 大学院人間健康科学研究科 准教授の井上薫さんに聞いた。

「人と交流することに主眼を置いたコミュニケーションロボットが今、高齢者介護の現場にも取り入れられています。たとえばパロは、心を癒す動物セラピーの役割を担うため、動物の動きを追求したロボット。いろいろな声色で鳴き、やさしく撫でると甘えたり、名づけた名前を呼ぶと振り向いたりします」

 エクステのような長いまつげでうっとりまばたきする瞳。介護ロボットに若干、懐疑的だったはずの私の心は、一瞬でとりこになり、表情豊かな声や動きにメロメロになった。

「記者さんのその反応のような、人の心に関する数多くの検証をもとに開発されているんですよ。ほかに人の言葉や顔を覚えて自分から話しかけ、インターネットからの最新情報でおしゃべりをするパルロやペッパーなども介護現場で活躍中です」

 井上さんの臨床研究の相棒でもあるパロは、“世界一の癒しロボット”としてギネス世界記録にも認定、特に認知症のうつ、不安、痛みなどが軽減され、米国では医療機器として薬剤の軽減にも役立っている。

「認知症の場合、症状が進むと自分に必要なモノや情報を選択できなくなり、生活面では介護者の指示に従うことが多くなります。すると主体的な感情や行動を出す場面がどんどん減ってしまう。でも心には残っているのです。パロを見て、甘えられることで隠れた感情がわき起こり、行動を引き出します」

 在宅介護中の家庭でパロを使う実験では、言葉を発しなくなった老親が、パロのかわいさを家族に語り始めるなど、つい見落としていた親の好奇心や生活意欲を再発見できたという声が相次いだという。

「日本の介護はまだ食事や排泄、入浴などのできないことを手伝うことが中心。でも介護される高齢者は、不安や周囲が手伝いすぎることで、本来の能力が発揮できないこともあります。これからの介護は心を癒し、愛情や好奇心、意欲を引き出すことが重要。それらが大きな力を発揮することが、コミュニケーションロボットの効果で明らかになればいいですね」

文/N記者(53歳・女性・現在母を介護中)

※女性セブン2017年9月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
モサドの次なる標的とは(右はモサド長官のダビデ・バルネア氏、左はネタニヤフ首相/共同通信社)
イスラエルの対イラン「ライジング・ライオン作戦」を成功させた“世界最強諜報機関”モサドのベールに包まれた業務 イラン防諜部隊のトップ以下20人を二重スパイにした実績も
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン