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年金75歳支給時代、貯金5000万円あっても足りない

「年金で悠々自適」どころか…

 定年後のセカンドライフをどう過ごすか。再雇用で働きながら、現役時代に行けなかった妻との旅行や新たな趣味に挑戦する。退職金で自宅のローンを完済し、子どもや孫に資産を残す作業に取り掛かる。穏やかな隠居生活を楽しむ。誰しもが自分なりの人生設計を描いているはずだ。

 定年後は自然の中で自給自足の生活を送りたい──そう考えて実践しているのが東京育ちのMさん夫妻だ。

 50代の時に参加した農業体験で野菜作りに興味を持ち、定年を機に思いきって長野県の古民家を買い取り、休耕地を借りて野菜作りを始めることにした。当面は会社の再雇用制度で週4日働きながら週末に長野に通って少しずつ畑を広げ、65歳の年金満額支給を迎えたら長野に移住して本格的に自給自足生活を始めるつもりだ。

「移住に先立つ古民家のリフォームなどに費用がかかったので、貯金は退職金など2500万円ほどで少し心許ない気もしますが、生活は年金でなんとかやりくりできると考えている。収穫した野菜は友人たちにも分ける予定で、農業収入はあてにしています」(Mさん)

 準備さえ怠らなければ、年金65歳支給の時代はそうしたセカンドライフを計画し、実行に移すことも可能だった。だが、いま、退職後の人生設計、老後の資金計画を根底から覆す改悪が進んでいる。

「年金75歳支給」時代の到来だ。本誌・週刊ポストは、内閣府の有識者会議(今年7月)で「年金75歳選択支給」の議論が行なわれており、年内にも閣議決定される『高齢社会対策大綱』に盛り込まれる可能性が高いことを報じてきた。

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