「今は利益が出ない上に人手不足が深刻で、経営者はみんなどうやって人件費を抑えながら人材を確保するかに頭を悩ませている。こういっちゃなんだが、経験豊富で仕事もできる“即戦力”を定年後に安い給料でコキ使える再雇用はとても都合がいい。人件費のかさむ定年延長を役所が導入すれば民間にも広がる? そんなわけないのは役人も百も承知のはず。自分たちだけ甘い汁を吸おうという魂胆に決まっている」
こういう時だけ迅速に動くのがこの国の“お役所仕事”だ。
自民党の提言を受け、安倍内閣が公務員の定年引き上げの具体的検討を盛り込んだ「骨太の方針」を閣議決定(6月)すると、霞が関では関係省庁がこの夏から連絡会議を設置して検討に着手した。年末までに国家公務員法と地方公務員法の改正案をまとめ、来年(2018年)1月からの通常国会で成立、翌2019年から公務員の定年を段階的に延長し、年金が65歳支給開始となる2025年に「65歳完全定年制」を敷くという、まさに疾風迅雷で実施するスケジュールを立てている。
役人のモチベーションがあがるのは当然だろう。現在57歳の国家公務員(ノンキャリア職員)の平均年収は約804万円で、定年延長がなければ2020年に829万円で60歳の定年を迎える。ところが、定年延長で65歳まで勤め上げればその給与水準をほぼ維持したまま、ざっと4000万円ほどの生涯賃金が上積みされる計算になるのだ。
※週刊ポスト2017年9月22日号