もう1つ、飼い主をモンスター化させている要因が、「情報過多」だ。今はネットを検索するだけで、ペットに関する種々雑多な情報が溢れんばかりに出てくる時代である。白金高輪動物病院総院長の佐藤貴紀さんは、「情報の取捨選択が大切」と訴える。

「情報が多いことを悪いといっているのではありません。ただ間違った情報もたくさんある。それらをうのみにしたり、飼い主さん同士のコミュニティーで語られている医療費や治療に関するマイナス情報を読んでいるうちに、不安になり、深みにハマってしまうケースが散見されます。

 飼い主の皆様は、まず目の前の獣医師さんに対し、できること、できないことをはっきり聞くことが大切です。命に100%の保証は不可能です。その大前提を理解した上で、主治医と二人三脚で最善の治療方法を模索してほしいと思います」

 受ける治療によって病院を使い分けることも必要だと、佐藤さんは続ける。

「獣医師の世界でも最近は“専門医制度”が充実してきています。例えばワクチン接種などは近所の病院。重篤な病気の場合はその分野の専門医を選ぶようにすればトラブルは減少するはずです」

 前出の堀井先生もこう話す。

「過剰なクレームや訴訟によって獣医師が疲弊すれば、治療効率が落ち、翻ってペットと飼い主に返ってきます。その際、最も被害を被るのは、まっとうな飼い主とペットたちだということを忘れてはなりません。負の連鎖を一日も早く止めるためにも、飼い主と獣医師の関係が今改めて問われているのだと思います」

 愛するペットもまた、飼い主の心の平安を祈っている。

※女性セブン2017年9月21日号

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