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バルミューダ・寺尾玄社長「会社ってバンドに似てると思う」

寺尾玄社長。「起業する人が増えたら社会は活性化するはずです」(撮影/内海裕之)

“最高においしい”トーストを焼く2万円超の「バルミューダ ザ・トースター」(以下「ザ・トースター」、そよ風を再現した3万円超の扇風機「ザ・グリーンファン」(以下「グリーファン」)。これまでになかった高級家電を世に送り出しているバルミューダが、9月6日、新商品となる「バルミューダ ザ・レンジ」を発表した。

「バルミューダ ザ・レンジ」(以下「ザ・レンジ」)は、必要な機能をわかりやすくシンプルに備えた上に、ボタンなどの操作音を、楽器の音が美しくユーモラスに奏でる。(価格帯は税別4万3500円~5万4500円、11月末〜12月上旬の出荷を予定)。

 成熟する家電市場で異例のヒットを飛ばす理由はどこにあるのか? 高校を中退して海外を放浪、ミュージシャン活動をするも挫折、一転、ものづくりの道へと分け入った寺尾玄(げん)社長。商品と同様、その人生も独自性に満ちている。「うまくいったという気持ちはゼロパーセント」と、はるか先を見据える社長がいま考えていること、これからの会社像について、話を聞いた。(【後編】をお届けします)

* * *
◆起業したいという高校生4人の来社をきっかけに

──バルミューダを創業される前、寺尾社長はロックミュージシャンでした。その前は、高校を辞めて海外を放浪されていた。そうした波乱の半生は自著『行こう、どこにもなかった方法で』(新潮社)に詳しいですが、この本を書かれたきっかけは何だったのでしょう。

寺尾:昨年、高校生4人のグループが会社を訪ねてきました。僕たちは将来起業したいから、話を聞きたいと。もちろん自分が知っていることを全部教えてあげたくなって、2時間くらい話したんですが、とうてい2時間では語り切れなかったんです。そこで、もし私でお役に立つなら、これまで苦労したこと、厳しかったこと、しかし、そういったことは乗り切ってしまえば大したことではないんだということも含めて、伝えたいと思ったんです。日本で起業する人が増えたら、社会は活性化するはずですから。

 ただ、音楽をやめて、ものづくりの世界に入った辺りから書き始めても、なぜ、ここに行き着いたのか、変遷の経緯や自分の考え方の根底にあるものが説明できなかったんです。なぜこういう考え方の人間になったのかを書くには、両親のことを書かざるを得ないなと。

──ご両親の独自の教育が、寺尾社長の人間形成に大きな影響を与えていることがよくわかります。高校を辞めて一人で海外へ行けと薦めるなど、なかなかできることではないですよね。

寺尾:私も自分の息子にはできません(笑)。やらせたい気持ちはあるけれど、実際は無理でしょうね。父と母は私に、渾身の力で、「何をやってもいいんだ」ということを教えてくれました。というより、叩き込まれたに近い。何でもできるとは思っていませんが、何をやってもいいとは思っています。自分の可能性を信じています。起業をはじめ、思い切ったことができるかどうかは、「能力の差」ではありません。やっていいと知っているかどうか。「知識の差」なんですね。私の場合はやっていいと知っていたのでできたにすぎません。

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