それはすなわち負け越しが決まったということ。そして同時に、36歳の彼にとって、相撲人生において最初で最後のチャンスだっただろう三賞を逃したことになる。歓喜の瞬間から一転、奈落の底に突き落とされたわけです。土俵下で審判長の説明を聞いて、本気で泣きそうになっている力士を初めて見ました。
その時の里山の顔が忘れられませんが、この一番に彼が賭けていた重いものを知っていただけに、見ている方はもっと泣きそうでした。すんなり負けたならまだしも、一度軍配をもらいながら逆転負けですからショックも倍増。これほど失うものが多い敗北はあったでしょうか。
長くベストと思っていた流血の一番は、悲しいかなカラー映像がないんです。久々に見直す機会があったがリアリティが伝わってこなかった。今はこの悲しい里山の一番がベストですね。
※週刊ポスト2017年9月29日号