明治2年、荘内藩の菅実秀は東京で、薩摩藩の寛大な措置について黒田清隆に礼を言います。すると黒田は、「あれは私の処置ではなく、西郷先生の指示でやったことです」と冒頭の言葉を伝えたのです。

 旧敵国の人々からもそれほど慕われた西郷さんの言葉には、時を経ても通ずる、人間の生き方に関わる教えに富んでいます。西郷さんには「著書」はありません。思えば『論語』や『福音書』も孔子やイエスの著書ではありません。その言葉を聞いた人が記憶し、書き残し今に伝わったものです。その点、『南洲翁遺訓』と成立が似ています。その意味で本書は西郷さんの“唯一の著書”といってよいでしょう。

 出版されてから今日に至るまで、限りない数の複製本や解説本が出版されています。現代の言葉で甦らせると、西郷さんの教えは今の私たちにも響くものであることがわかります。『南洲翁遺訓』を読んでみると、なぜ西郷さんが今も「さん」づけで呼ばれているのか、なんとなくわかってくるはずです。

※SAPIO2017年10月号

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