棋士とご飯といえば、「ひふみん」の愛称でテレビに引っ張りだこの加藤一二三九段を挙げないわけにいかない。出前で鰻重を注文し続けたことは、将棋ファンには有名。2年前には、チキンカツ定食とカキフライ定食を同時に出前注文したこともある。筆者は加藤があるタイトル戦で立会人を務めたとき、朝食のバイキングで数枚の皿にどっさり盛った野菜や果物を食べていた姿が印象に残っている。
その加藤に盤上だけでなく、盤外でも火花を散らしたのが米長邦雄永世棋聖だ。2人が争った1979年の第4期棋王戦五番勝負でのこと。加藤がおやつにミカンを頼むと、米長はミカンをなんと30個も注文し、パクパク食べながら対局した。まるで子どものけんかのような意地の張り合いだった。
米長は冗談めかして「顔は合うけど気は合わない」と言ったこともあるが、それだけ相手を認めていたということでもある。
◆文/君島俊介(将棋ライター)
※週刊ポスト2017年10月6日号