◆軍事パレードの効果
米国が金正恩体制を崩壊させるために攻撃を仕掛けてこないという確信があれば、正規軍の実際の能力は低くてもよい。とはいえ、大規模な軍事パレードや軍事演習などを行って、米国をはじめとする関係国に、「北朝鮮軍の能力の高さ」を誇示するデモンストレーションは適時行う必要がある。
金正恩の前で軍事パレードや軍事演習はできても、正規軍は一部の精鋭部隊を除いて崩壊寸前の状態にある。このような状況だから、政治的により高い効果が期待できる弾道ミサイルや核兵器の開発を続ける必要性が出てきたのだ。
◆中国の介入
そもそも北朝鮮への攻撃は、米海軍が保有している3000発のトマホーク巡航ミサイルを全て使用しても足りない。北朝鮮軍が大きな打撃を受けることは間違いないが、トマホークだけで壊滅はしないだろう。
このため攻撃が短期間で終わることは考えにくい。本格戦闘が終了し、大部分の将兵が戦わずして投降し、残存勢力による目立った抵抗がなかったとしても、数百万人もの将兵の武装解除には多大な時間がかかるだろう。
たとえ、最終的な勝利が望めない「烏合の衆」でも、兵器の老朽化や燃料不足で能力を100パーセント発揮できなくても、朝鮮半島を混乱させて戦争を長引かせることはできる。戦争が長引けば中国軍の介入があるかもしれない。こうなると北朝鮮軍にもチャンスが巡ってくる。
このため、米国が北朝鮮へ武力行使するにあたっては、事前に中国から「どのような事態になっても中国軍は介入しない」という確約を得ておく必要がある。さらに、金正恩政権崩壊後の新体制について合意しておくことも必要だろう。これは非常に厄介な問題で、確約や合意を得ることは簡単なことではない。
冒頭で少し触れたが、ティラーソン米国務長官は9月30日、訪問先の北京での記者会見で、北朝鮮と「対話ルートを持っている」として、対話に臨む用意があるのかを「探っている」と述べている。
トランプ大統領が「対話」に反対しているとはいえ、事態はまさに北朝鮮の思惑どおりに動いている。北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験は、米国との交渉を開始するにあたり、自国が有利な立場になったと確信するまで継続されるだろう。